朝一番のマグカップ

 4年近く使い続けているマグカップがある。白い陶製のもので、「Newton」と書いてあり、一口かじったリンゴのマークが入っている。パソコン(Macintosh Performa 6210)を購入した折りに、「ついでにこれもちょうだい」と言って、棚に陳列されていたところをもらってきたものである。パソコン自体はもうすぐ世代交代を迎えるのだが(iMac DV Special Editionがやってくるのを待っているところなのだ)、カップの方はまだまだ使い続ける。
 これにはアルコール以外のあらゆる飲み物が注がれる。そのたっぷりとした存在は、ただ単にたくさん入るというだけではなく、安定感や安心感といったものを与えてくれる。
 ここのところ、起き抜けにホットミルクを飲むようになった。朝の気温が低くなってきたから、冷たいものには気持ちが向かないということと、もう一つは体調による。どうにも胃がすっきりとしないのだ。いつもはそこに胃があることなんて気にもかけないのに、どんよりと重たい感覚が胃の自己主張を代弁している。痛むというわけでもないが、そんなに楽でもない。だからコーヒーも朝一番にはあまり飲まなくなった。
 冷蔵庫から取り出した1.5リットルパックの「コープ淡路島牛乳」をカップに9割ほど注ぐ。1リットルでは1週間分として少し足りないので、このサイズが僕にはぴったりだ。乳離れできていないのである。
 電子レンジに入れ、「牛乳1杯・強」を選んでスタートボタンを押す。「1杯・2杯」「弱・通常・強」によって考えられる6通りの組み合わせから探し出されたちょうどよい設定である。
 電子音ができあがりを知らせると、表面にタンパク質の膜が薄くはったホットミルクのできあがり。子どものころはこの膜が気持ち悪かったが、今は気にせずちゅるちゅると。一息に飲めるほどぬるいわけでもなく、舌を火傷するほど熱すぎるわけでもなく。一口ずつゆっくりとすすれるくらいの適温。ほんのりした甘みと暖かさ、そして滑らかさが身体を内側から目覚めさせてくれる。
 ところで、熱い飲み物が入ったマグカップと言えば、「トレーナーだかセーターだかの袖を手のひらまでひっぱてきた両手でカップを包み込むように持ち、ふーふーとさましながら飲む少女」というイメージがあるのだけれど、一体なんだろう。


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